■ 三峰神社
- 秩父鉄道 三峰口駅 -
ここのところなにかと疲れ気味なので、気分転換をかねて最近話題のパワースポットにあやかろうと、奥秩父の三峰神社を訪ねた。
三峰神社の玄関口、秩父鉄道の「三峰口駅」は所沢から約2時間弱、埼玉県内とはいえちょっとした旅行気分を味わうことができる。この日は秋の三連休、昨今の登山ブームでローカル路線とは思えないくらいの混雑。狭いボックス席に2時間近く座っていたためか、とても遠くまで来たような感覚になる。三峰口駅からは、約1時間のバス移動。時刻表を調べたときには、秋の山を眺めながらローカルバスに揺られてのんびりと行こうと思っていた。けれど電車の混雑を見て悪い予感が。三峰口駅の改札はPASMOやSuicaが使えず、改札を出るまでに何十人もの行列。私も含め多くの人がそのことを知らなかったようだ。そしてバス停には更にたくさんの人が並んでいる。この数では絶対に座れないだろう。
- バスを降りると、そこは秋 -
1台のバスでは乗り切れないだろうと思いながら、しばらくバス停で行列していると、1時間に1本のバスが3台運転で到着した。バスは秩父駅始発のため、三峰口駅に着いたときには3台運転だったにもかかわらず、既に立ち乗りの人が目立つ。三峰口駅の待ち客を乗せると、それはまるで通勤ラッシュ。私も途中までは立ち乗りになってしまった。満員電車のようなバスに揺られること約1時間。乗車中は外の風景など楽しむ余裕はなく、かえってストレスを増した気がした。
そしてようやく三峰神社に到着。バスを降りて見上げた秋の空と山の秋の景色がなんと美しく感じられたことか。苦労して遠出した苦労が、少しだけ報われた。
- 参道のお土産屋 -
この混雑は近年の登山ブームや、三峰神社が関東近郊のパワースポットとして紹介されたためらしい。しかも秩父を舞台にしたアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」が人気で、この近隣が話題になっているとのこと。だから三峰神社のバス停は、大きなリュックを背負った登山客や三峰参拝の人たちだけでなく、町歩きをするような服装の若者のグループも多い。山深いこのような観光地にとってはとてもうれしいことだろう。バスの運転手も土産物屋の店員も「忙しすぎて休みがないよ」と笑っていた。
- 三つ鳥居 -
境内に入る前に帰り道のことが気になるが、混雑を嘆いてばかりはいられない。パワースポットのある拝殿を目指す。境内へ入り口にあるの鳥居は全国的にも珍しい形の「三つ鳥居」という様式。関東の大きな神社では三峰神社にしかないものらしい。三つ鳥居が何を意味したものかわからないけれど、なんとなくありがたい。「サントリー」と何か関係があるのだろうか(笑)?
- 三つ鳥居を守る狛犬 -
三峰神社の信仰の中核には山犬信仰があるという。「大口真神(お使い神、お犬さま)」という神様とされている。1700年代、修行中の神職を山中から現れた狼の群が守ったという言い伝えから、害獣避け、火災避けの守り神とされているらしい。だからこの狛犬は日本狼をかたどったものだと思う。まずは鳥居と狛犬に一礼して、参道を進む。
- 参道を登る -
振り返れば多くの人が参道を登ってくる。その服装は、本格的な登山のいでたちから、今風のスタイルの若者まで様々。もし登山ブームがなく、テレビでの紹介もなかったとしたら、この場所はきっともっと静かだっただろう。
- 講を組んで参拝した記念に -
昔は富士山信仰と同じように「講」を組んで三峰神社に参拝していた。その時代の名残だろう、今でも講のなを刻んだ立派な石版が参道に並んでいた。
- 三峰信仰 -
そんな石碑ばかりではなく、近年何かを奉納した会社や信者の木の立て札も立ち並んでた。三峰神社が霊験あらたかで今でも厚い信仰を集めているということだろう。
- 参道の紅葉 -
参道を進む視線の先の山肌は、鮮やかな紅葉で染まっている。下界よりも秋が1ヶ月ほど早いように感じられる。少々の上り坂で火照った体に、山中のひんやり空気がとても心地よい。
- 遥拝殿の紅葉 -
ガイドによるとこの階段の上に「遥拝殿」という見晴台があるらしい。境内では唯一奥秩父の山並みを一望できるということで、ちょっとだけ階段を上る。その先に見える黄葉もまた美しい。
- 遥拝殿の紅葉 -
少しだけ雲が多くなってきてしまったのか、遥拝殿からは山々を拝むことは出来なかった。けれど、そこから見上げた寺社建築の屋根の上に広がる秋は、やっぱり良いものだ。
- 摂末社 -
拝殿の手前には、「摂末社」という小さな社が20社ほど並んでいる。これらは三峰神社と同じ神を祀る全国の社とのことで、有名神社の名前も見受けられる。
- 摂末社 -
紅葉した木々の間から射す木漏れ日が、社を照らし出す。小さな社ではあるが、ただの木漏れ日ではない神々しさを感じる。
- 摂末社の伊勢神宮 -
摂末社の一番奥には、小さないはいえないほど立派な社がある。これは伊勢神宮の摂末社。さすが伊勢神宮は別格の扱いである。
- ご神木 -
摂末社を過ぎ、氏子家系の祖霊を祀る社と、国つくりの神々の一人である国常立尊を祀る「国常立尊神社」を過ぎると、2本の巨大な杉が見えてくる。これが三峰神社のパワースポットのご神木である。まずはこの木々に触れて、山々のパワーを身体に吸収してみた。深呼吸して山の香りを体中に行き渡らせて、少しだけリフレッシュ。
- 拝殿 -
本殿を直接見ることは出来ないので、拝殿で手を合わせる。これほど高い山を登ってきたと思えないほど、立派な社には思わず見入ってしまう。実はこの向こう側に鉄筋コンクリート立てのホテルのような宿坊があり、ちょっとだけ興ざめしてしまったのだが・・・(汗)。
- 拝殿 -
しかしこれだけたくさんの人が訪れていれば、あのバスの混雑も当たり前だと思う。連休中にはもう少しバスを増発してくれれば、ストレスなく参拝に集中できるのに。参道の下から一礼しつつ、現実的な愚痴が脳裏をよぎる。
- 縁結びの木 -
バス停からは拝殿の奥になる位置関係なのだが、少しだけ人の流れから外れたあたりに「縁結びの木」や、お犬様の社である「お仮屋」がある。縁結びというと男女の縁結びが主なご利益だが、そのほかにも仕事の縁や暮らしの縁なども含まれる。色々な良い縁を願い、手を合わせる。
- 生命力あふれる木々 -
この山の緑を見ると、そこはかとなない力を感じる。木々は豊かに茂り、秋というのに緑はとても鮮やかだ。やはりパワースポットだと多くの人が感じるのだろう。
- 秋の新そば -
拝殿で手を合わせ、ひと通り境内を散策すると、バスの出発時間まで1時間を切ってしまった。帰りは座ってゆきたいので、昼食は手早く土産物屋で済ませることにした。何件かあるお店の中で、「秩父の新そば」との看板を見つけたので、その店で月見をオーダー。スルスルッと秋の香りを流し込み、バス停に急ぐ。
- 秩父鉄道に乗って -
三峰神社の参拝を終え、下山のバスに乗る。帰りは座ることができたので、そのまま終点の西武秩父駅まで乗車する。ここではPASMOが使えて、スムーズに改札を入り、ちょうど入線してきた飯能行きの西武線に乗ることが出来た。参拝は2時間、移動6時間で1日のほとんどが移動時間だった。隣県とはいえ、泊りがけで来たほうが良かったかな、と思う秋の休日でした。