Sweet Heaven Photograph & Words.
 空間だけが広がっている。広いのか、そうでもないのか、それを測る術はない。もちろん測ろうとするものもいない。
 でも空間だけしかない世界で何かが起こった。大きな事件なのか、些細なことなのか、それを記録する術はない。もちろん記録するものもいない。
 空間はあるところでは大きくふくらまされ、あるところでは小さく押し込められた。
 大きく膨らむ空間にも、小さく押し込まれてゆく空間にも、何もなかったわけではない。空間が存在していた。空間には広さがあった。縦、横、高さ、深さ、あっち、こっち、そっち・・・などいくつもの方向に広さがあった。
 大きく膨らみ続ける空間は、広さが希薄になってゆき、どんどんと無に近づいている。けれど、無になることはなくて、ずっとずっと薄まりながら広がり続けている。
 小さく押し込められてゆく空間は、広さがどんどん濃くなってゆき、やがて息苦しくなるほど小さくなってしまった。するとたくさんあった広さのうちの多くが、突然小さく固まってしまった。そして広さは三つくらいになってしまい、ほかの広さはその中に押し込められてしまった。残った広さの中に納まっていても、あっちやこっちなどの広さは、力を持て余していた。それどころか、ますます力が湧いてきた。なにしろこの空間はどんどんどんどん小さくなってゆき、吐き出す先もないのだから当然である。
 残った広さに抑え込まれた力のうち、ごく一部が、空間の外から抑え込む力と、自分たちの数に耐えられなくなって、突然、そして一気に勢いよくつぶれてしまった。つぶれた力はたくさんの小さな粒になった。小さな粒になった一部の力は、自分たちが小さくなったのか、空間が広くなったのかわからなかった。
 一部の力が小さな粒々になったことで、空間に余裕ができた。そのため、残った力も粒々たちもしばらくは安心してそのままでいられるような気がした。そのままでいるようであっても、本当は空間はますます狭くなっている。けれど、粒々は小さくなった時の勢いが収まらずに、ますます小さくなり続けている。それは空間が半分になる間に、粒々が半分より少し小さくなるくらいの、ちょっとした勢いの違いだった。そして半分と、半分とちょっとの差が、空間のなかに余分な隙間を作ることになってしまった。でも余分な隙間は、力として残った力が入り込んでくるか、粒同士がくっついて埋め合わせるか、どちらかのことで折り合いがついた。そんなことがしばらく続くと、粒どうしがまとまって、粒々の塊ができた。塊の周りには余分な隙間ができるから、力が入り込んでくることもあるけれど、大きく固まった別の粒々がくっついてくることもあった。そんなこともしばらく続いた。すると遠くの粒々の塊がぼんやりと見えるようになってきた。それからもうしばらくすると、塊のなかに変なものを出すやつが現れた。変なものはゆらゆら揺れたり、ぶつかってはじけたりして、力に戻っていった。でもそれはごくごく一部のほんの少しだけだった。けれど遠くまで見渡せるようになった空間の中では、やつらが妙に目立つ。また遠くまで見渡せるようになったせいで、空間の果てがえらく遠くになってしまったことに気づかされた。粒々は少し寂しくなった。果てはどんどん遠くなってゆく。でも本当は果てが遠くに行ってしまったのではなくて、果てが迫ってくるよりもはやく自分たちが小さくなっているのだと知っていた。少しの間は寂しいけれど、時々仲間とくっつくことができた。そして仲間が増えれば、別の仲間もやってくるようになった。余分な隙間も悪いもんじゃないと粒々は思った。そしていつの間にか、たくさんの仲間が集まって、みんなで円を描いて踊っていた。けれど力のやつはそこに割り込んできてしまう。本当に近くの粒々の仲間なら、いつかは同じ輪の中で踊れるようになるけれど、ちょっと離れた粒々との間には、力のやつがどんどん割り込んで来る。そして少し遠くに見えていた粒々は、どんどん遠くに行ってしまう。それも仕方のないことだ。空間は狭くなり続けているし、しばらくの間は誰も小さくなれそうにないのだから、力のやつらだって、行き場に困っているのだ。この頃は粒々仲間よりも、力の連中の数が増えてきているように見える。
円の真ん中に行くと、仲間とはもう離れない。真ん中に行く入り口さえ通り過ぎれば、一気に仲間どうしが一緒になれる。しかも一緒になったままずっと離れなくてよい。その世界はどんなに素晴らしいのだろう。でも円の真ん中では、例の目立つやつがでてこないから、どこでだれが何をしているかわからない。
 そんなことがけっこう長い間続く。
 けっこう長い間には、色々なことが起こる。ある時、ある小さな粒々の周りをぐるぐるしている、さらに小さな粒々の上に、さらにさらに小さな粒でできている見えないほどの何かが変なことをしはじめた。理(ことわり)に逆らう何かがあらわれたのだ。それらはものすごく小さくて、そんなに数が多いわけでもないくせに、案外と目立つ。そのうち何だかちょこちょこごちゃごちゃと動いて、なんだかよくわからない変なものをまき散らしはじめた。何かはじめたと思ったら、ちかくの粒々にも飛んで行って、何かをしている。なかには粒々をたくさんまとめて吸い込んで、踊りの輪の中心みたいな穴を作って、そのなかに飛び込んでゆくやつがいたりする。そうかと思えば、何かをやたら吐き出すものを作って、そこから出てきたりするものまでいる。そんものがあちこちに現れては、すぐにいなくなってしまう。あれはいったい何なんだ?
 そのあとも空間と粒々はまだまだ小さくなり続けている。
 でもとなりの空間はどんどん膨らみ続けている。
 空間の外側から見たら、膨らんでゆくところも押し込まられてゆくところも、見えないほど小さいので、何も起こらなかったことに等しい。そして何か起きていたとしても、それらを足して、足した数で割ってしまえば、変わらない。結局何も起きていないのだ。