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Sweet Heaven Photograph & Words.
物語:グリーンフラッシュ
掲載日:2016/11/06
小笠原が歴史に登場するよりはるか昔、南洋から小舟でやってきた人々が、平地に小さな村を作って暮らしていた。
島には木の実が実り、海にはたくさんの魚がいて、人々はつつましくも穏やかに暮らしていた。
しかしある日、島に大きな船がやってきて、武器を持った人が島の平地の村を横取りしてしまった。
もともと島に暮していた人たちは、仕方なく山の向こうの小さな浜辺に移り住んだ。
その土地は水に乏しく、また風が強くて木の実が実らない場所だった。
暮らしは日に日に苦しくなってきたので、人々はやむなく、攻め入ってきた人間と戦い、村を取り戻すことにした。
穏やかに暮らしていた人たちは、武器の作り方を知らず、石や木の枝で戦ったが、勝ち目はなかった。
そして、戦った人たちがみな倒れた時、神の声が聞こえ、海がせりあがり、海辺の村をすべて飲み込んでしまった。
結局、戦いをしていたものはだれもみな残らず海の流されてしまい、残ったのはたった一人の子供だけだった。
山と磯しかなくなってしまった島に一人残されたその子は、なすすべもなく三日三晩泣き続けた。
そして泣く力も、流す涙も果てしまい、最後には真っ赤な夕空を見ながら、昔見た穏やかな砂浜の海の水と同じ色の涙を流して、西の磯から身を投げた。
その涙は、日の沈む遠くの深い青い色の海まで流れ着いた。
それ以来、その子の悲しみがはれない日は、夕暮れの空は赤く染まり、悲しみを忘れられた日は、夕日が涙の色を映して緑色に見えた。
そしていつか悲しみが消えた日には、太陽は海の青と同じ色に輝きながら沈んでゆくが、未だにその日は訪れていない、と言われている。